糖尿病の患者さんが、風邪や下痢などの他の病気になった場合をシックデイ(Sick Day)といいます。
このような体調の悪いときには血糖コントロールが乱れ、高血糖になったり、食事が十分にとれずに血糖値がいつもより低くなったりします。
今回は「シックデイ」について解説したいと思います。
糖尿病について
糖尿病とは、血糖を下げるインスリンのはたらきが不十分でないため、血糖値が高くなる病気です。
放置していると、いろいろな臓器に合併症が起こるリスクが高まります。
食事をすると血糖値が上がります。
上がった血糖値をさげてくれるのがインスリンというホルモンです。
糖尿病とは、このインスリンによる血糖を調節する仕組みがうまく働かなくなり、高血糖になってしまう病気です。
シックデイって?
風邪などの感染症、胃腸炎などで具合が悪く、食事を十分に摂れない状態のことをシックデイといいます。
糖尿病患者さん、特にインスリンを打っている患者さんには危機的な状態です。
シックデイの際には感染を合併していることが多く、ステロイドホルモン分泌が増加したり炎症性サイトカインが産生されることで血糖は高めで推移することが多いです。
同時に脱水もきたしやすくなっています。
これらはいずれも糖尿病性ケトアシドーシスの引き金を引くものにもなります。
シックデイルールって?
シックデイのときの対応をシックデイルールと呼んでいます。
シックデイの時にはストレスのため高血糖になったり、下痢や嘔吐で低血糖になったり、血糖値が乱高下しやすく特別な注意が必要です。
基本的には、まず脱水を防ぐために水分を十分に補給すること。
おかゆやうどん、スープ、汁物などの消化の良いもの、ゼリーやアイスクリームなど摂取しやすいものでも構いませんので、できるだけ食べるようにしましょう。
飲み食いが全くできない状態なら点滴が必要ですので、医療機関を受診するようにしてください。
必要な時には医療機関を受診するという態度が最も重要かもしれません。
インスリン注射を行っておられる方
インスリン注射は絶対に止めないでください。
食べられなくて、どれだけ打ったらいいかわからない、という方は、まず半分だけ打つ。
それから頻回に血糖自己測定をしましょう。
思わぬ高血糖になったりしますので、普段より多く測定する必要があります。
まず半分打って、それでも下がらないなら、残りの半分を打ってください。
食事のための超速効型インスリン(ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ)と基礎インスリンを分けて打っておられる、いわゆる強化療法の方、基礎インスリン(レベミル、ランタスやグラルギン、トレシーバといったインスリン)のほうはそのままの量で打つか、少し減量して打ってください。
食事のための超速効型インスリンのほうは、どれだけ食べられるかわからないときには食前打ちでなく、食後打ちとしてください。
食後に、食べた量に応じて打ちましょう。
内服薬の方
基本的に、飲み食いができないなら、糖尿病薬は服用しないようにしましょう。
特にメトグルコという薬はシックデイの時には止めておくべき薬です(エクメットやイニシンク、メタクトといった配合剤もこれを含んでいます)。
インスリンを出させる薬の中でDPP-4阻害薬という薬の方、これは低血糖を起こすようなものではないので、内服していただいて差し支えありません。
膵臓を刺激してインスリンを出させるSU剤・グリニド剤といった薬は、半分以上の食事ができたなら、半分だけのむ、という風にしますが、ご自身の内服しておられるものが、どのジャンルのものかはわかりにくいと思います。
飲み食いが全くできない状態なら点滴が必要ですので、医療機関を受診するようにしてください。
まとめ
病型(Ⅰ型、Ⅱ型)、治療法(インスリン、内服、食事のみ)、併発症の程度、普段のコントロール状況などにより、対応は変わってきます。
自宅療養で回復するか、早急に受診するかの見極めも必要です。
従って、具体的な方法は主治医に確認しておくことが必要です。
今回は「シックデイ」について解説しました。