糖尿病が進行すると恐いのは合併症です。
糖尿病は自覚症状がないため、いつの間にか症状が進行し手遅れになると失明、人工透析、足の切断などの重大な障害を引き起こしてしまいます。
自覚症状が出た時には、すでに症状が悪化しているか、合併症を起こしている可能性が疑われます。
定期的に検査を行い、正しく病態を評価し、適切な治療を継続することが重要です。
今回は「糖尿病性腎症」について解説していきたいと思います。
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、血液の中のブドウ糖(グルコース)の濃度(血糖値)が高い状態(高血糖状態)が続く病気です。
放っておくと、さまざまな臓器に合併症が起こる危険性が高くなります。
私たちの食事の主食となる米やパンなどに多く含まれる糖質(炭水化物)は、小腸でブドウ糖に分解されて、血液の中に吸収されます。
この血液中の糖の値(血糖値)は、体の中の「インスリン」というホルモンの作用で、ほぼ一定の値に保たれています。
この血糖を調節する仕組みがうまく働かなくなり、血糖値が高い状態(高血糖状態)が続くようになってしまうのが糖尿病です。
糖尿病の診断基準について
1~4のいずれかに当てはまる場合は「糖尿病型」と判定されます。
2.75gブドウ糖負荷試験で2時間血糖値200mg/dl以上が確認された場合
3.随時血糖値200mg/dl以上が確認された場合
4.HbA1c 6.5%以上が確認された場合
別の日に検査して再び1~4に該当すれば、糖尿病と診断されます。
ただし、初回検査と再検査の少なくとも一方で、必ず1~3の基準を満たしている必要があり、4のHbA1cのみの反復検査では糖尿病とは診断されません。
1回の採血で血糖値とHbA1cを測定した場合、ともに糖尿病型であることが確認されれば、1回の検査だけでも糖尿病と診断されます。
糖尿病の3大合併症とは
・糖尿病性腎症
・糖尿病性神経障害
上記を糖尿病の3大合併症と呼びます。
糖尿病に特有の合併症で、高血糖を治療せずに放置していると、糖尿病発症時から約10年でこれらの合併症が出てくると言われています。
糖尿病性腎症
糖尿病を長く患うことでおこる腎機能障害のことです。
糖尿病の3大合併症の病気はすべて、糖尿病に長い期間かかっていることで神経や毛細血管に障害が起こることが原因です。
糖尿病性腎症の患者数は、年々増加傾向です。
そして近年では、新たに人工透析が必要となった理由の第1位が、糖尿病性腎症となっているほどです。
糖尿病性腎症の原因
糖尿病性腎症には、どうしてなるのでしょうか。
腎臓は、血液をろ過して尿を作るフィルターの役目をし、体内に不必要となった物質を体外に排泄します。
腎臓は主に糸球体と呼ばれる毛細血管からできていて、この糸球体を包んでいるのが、基底膜と呼ばれる小さな穴が集まった膜です。
この膜が実際には尿をろ過するフィルターの役目をしています。
しかし、糖尿病のコントロールが不十分で血糖値の高い状態が続くと、このフィルター(基底膜)の穴が大きくなってしまいます。
すると、血液のろ過が十分にされていない状態になり、尿に微量アルブミンが溢れ出てきます。
さらにその状態が進むと腎臓自体の機能が弱まり、十分な量の尿が作れない状態となります。
本来は尿と一緒に体外へ排泄される老廃物が排泄されずに、体内に有害物質が溜まってしまうため、人工透析でそれを取り除く必要が出てくるのです。
糖尿病性腎症の治療
糖尿病性腎症の治療には、血糖値を低く保つと共に、血圧のコントロールが重要になります。
また初期段階では、糸球体内圧を下げる内服薬による有効性が示唆されております。
また糖尿病性腎症の症状が進行していくと、糖尿病の糖質・炭水化物の制限と、腎臓に負担をかけるタンパク質、塩分の制限など食事療法などが重要となります。
治療は根気よく続けることが大切です。
糖尿病性腎症は、薬を飲んだらすぐに治るといった病気ではありません。
そして、痛みなどのはっきりとした自覚症状が出る病気でもありません。
しかし放置しておくと、将来的に人工透析が必要になるケースや、心筋梗塞などの心血管系疾患のリスクも高くなることが分かっているとても怖い病気です。
主治医の先生とよく相談しながら、根気よく治療を続けていくことが大切です。
まとめ
このように糖尿病は、放置しておくと大変恐ろしい合併症が出てくる病気ですが、食事や運動、薬剤などの助けによって、その症状をコントロールすることができ、健康な人と同様の生活を送ることができます。
まずは糖尿病を正しく理解し、糖尿病を予防することが大切です。
今回は「糖尿病性腎症」について解説しました。