糖尿病が進行すると恐いのは合併症です。
糖尿病は自覚症状がないため、いつの間にか症状が進行し手遅れになると失明、人工透析、足の切断などの重大な障害を引き起こしてしまいます。
自覚症状が出た時には、すでに症状が悪化しているか、合併症を起こしている可能性が疑われます。
定期的に検査を行い、正しく病態を評価し、適切な治療を継続することが重要です。
今回は「糖尿病性神経障害」について解説していきたいと思います。
糖尿病について
糖尿病とは、血糖を下げるインスリンのはたらきが不十分でないため、血糖値が高くなる病気です。
放置していると、いろいろな臓器に合併症が起こるリスクが高まります。
食事をすると血糖値が上がります。
上がった血糖値をさげてくれるのがインスリンというホルモンです。
糖尿病とは、このインスリンによる血糖を調節する仕組みがうまく働かなくなり、高血糖になってしまう病気です。
糖尿病の診断基準について
初回の検査で以下の項目を検査します。
2.75gブドウ糖負荷試験で2時間血糖値200mg/dl以上
3.随時血糖値200mg/dl以上
4.HbA1c 6.5%以上
別日に再検査をして再び1~4のいずれかに該当すれば、糖尿病と診断されます。
糖尿病の3大合併症とは
・糖尿病性腎症
・糖尿病性神経障害
上記を糖尿病の3大合併症と呼びます。
糖尿病に特有の合併症で、高血糖を治療せずに放置していると、糖尿病発症時から約10年でこれらの合併症が出てくると言われています。
糖尿病性神経障害
合併症の中で最も早く出てきます。
中心となる足や手の末梢神経障害の症状の出かたはさまざまで、手足のしびれ、けがややけどの痛みに気づかないなどです。
全身の神経の動きが鈍ってくるため、筋肉が萎縮したり、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、男性機能不全など、さまざまな自律神経障害の症状も現れます。
糖尿病性神経障害の種類
症状から多発性神経障害、自律性神経障害、単神経障害の3つに分けることができます。
多発性神経障害
糖尿病性神経障害の中で最も多いのが多発性神経障害です。
手先や足先が痺れたり、足の裏の感覚が鈍くなったりするなどの症状が表れます。
特に足先に症状が出やすく、両方の足の同じ部分に症状が出るのが特徴です。
足の感覚が鈍っているために、怪我や火傷をしているのに気が付かず悪化させ、壊疽に進行させてしまうことがあり、壊疽部分の切断を余儀なくされることがあります。
しかし、足病変から発生する切断の多くはフットケアにより予防が可能だと言われています。
常にウオノメやタコ、水虫、また靴ずれがないか、足が変形していないかに注意を払い、健康な状態に足を保つことが重要です。
自律性神経障害
自律性神経障害では1週間以上続く下痢や便秘、不整脈、発汗異常、勃起障害(ED)など広範囲な症状が表れます。
自律神経は本人がそれと意識しない状態で体内の臓器の調整を行っているので、自律性神経障害によって引き起こされる様々な症状は本人が糖尿病の合併症だと気が付かない場合が多くあります。
また、自律神経に障害が発生した方の場合、前触れもなく急な低血糖を起こす場合があります。
低血糖は判断力低下や眠気、意識障害を引き起こします。
低血糖に陥った際に、回りに誰もおらず何も対処できないまま更に低血糖が進むと、けいれん、昏睡などに陥り、命に関わる危険な状態になります。
このような不測の事態に備えて、糖尿病携帯カードを持参するようにし、周りの人にすぐにブドウ糖やジュースなどで対処してもらえるようにしておくことが大切です。
単神経障害
単神経障害では眼の動きをつかさどる神経が障害を起こし、物が二重に見える複視や顔面神経麻痺などの症状が表れます。
しかし、単神経障害の場合ほとんどが数か月~数年程度で自然に治癒します。
血糖値コントロールや良好な生活習慣をしていくことが重要です。
糖尿病性神経障害の治療
糖尿病性神経障害の治療の基本は血糖コントロールです。
薬物療法ではアルドース還元酵素阻害剤がよく用いられます。
症状が重篤な場合には痛みにより不眠やうつ状態になる場合もあり、鎮痛薬や抗うつ薬を用いて対症療法を行います。
症状が進んでからの治療は困難なので初期の段階で適切な治療を受けることが重要です。
まとめ
このように糖尿病は、放置しておくと大変恐ろしい合併症が出てくる病気ですが、食事や運動、薬剤などの助けによって、その症状をコントロールすることができ、健康な人と同様の生活を送ることができます。
まずは糖尿病を正しく理解し、糖尿病を予防することが大切です。
今回は「糖尿病性神経障害」について解説しました。